◆鉄骨造と同じ設計と施工を可能にした木質ラーメン架構

 いわき市の鈴木博建築事務所代表は、1987年に建築基準法が改正され、木造でもラーメン構造の設計が認められたのを受け、「構造用集成材を鉄骨と同様に扱えないものだろうかと考えた。そのためには継ぎ手をどうするかが課題で、研究が始まった。これがSPC工法の発想の原点」と開発の動機を語る。
 1996年に初めてSPC工法によりいわき市で建材会社の社屋を建築。以来、30棟以上の建物が全国に建築され、広がりを見せている。代表的なものは、木質構造のエコスクールとして建設された福井県南条町立南条小学校、島根県隠岐島フェリーターミナル(キンニャモニャセンター)、小樽市の宗円寺など。
 大きな地震が頻発するとともに、耐震強度問題が顕在化している中、一般住宅における耐震性確保も国や地方公共団体の大きな関心事。従来の工法では筋交いや耐力壁によって強度を求めていたが、それには限界があり、ラーメン構造による方法は地震によって掛かる力を分散することで、揺らして持たせる鉄骨造と同じ耐力を持つことができる。木造で大空間を確保でき、耐震性にも優れているこの工法が今後ますます広がることが予想される。

<木質構造の2方向ラーメン架構を実現>
 
 メタルプレートなど金物を使用する従来の接合方法では、同じ部位に2方向の接合を施すことが困難だった。これら従来の工法は一般的に1方向ラーメン構造と呼ばれ、架構の形状により山型、アーチ型、門型などがあるが、いずれの構造も1方向は耐力壁や筋交いを使用する必要があった。
 SPC工法の最大の特長は、木質材の柱と梁に直接ネジを切り、内側に雌ネジを持つ大径ボルトを梁と柱に螺旋込むことにより、鉄骨と同様の2方向への剛接合を可能にした点。接合は金物を介して柱と梁をハイテンションボルトで固定するだけといたってシンプル。柱と梁だけで建物を構成するために、全方位にスパンいっぱいの開口を設けられ、耐力壁や筋交いの配置にとらわれない自由空間計画が可能。SPC工法は接合部のディテールもスマートで、構造を表しにした意匠にも耐える美しさも実現した。また、建築後の間取り変更にも柔軟に対応可能なため、住宅はもちろん店舗やオフィスなど中規模建築にも適している。
  
     <架構イメージ>          <SPC工法の接合部>


<接合剛性、接合効率を実験で証明>

 実験の結果は、設計応力に十分耐え得るものであり、100体以上の試験体による引っ張り試験と接合部を含む架構の曲げ剪断実大実験を行い、外径37oボルトの場合、長さ50pで25t、30pで15tの引抜耐力(平均値)を得た。十字型、トの字型試験体による実大実験では、接合部にはほとんど変化が見られず、大径ボルト部分が破壊する前に、柱材(27×27p)が先に曲げによって破壊。この時、木部からボルトの抜け出しは認められなかった。この実験は明治大学科学技術研究所に委託、同理工学部の野口弘行教授の指導で実施された。
 施工方法は、最もシンプルな鉄骨造の場合と同じで、梁に装着されたプレート金具と柱材の大径ボルト中心の雌ネジに4本のボルトを締め付けるだけであるため、作業能率が良く、工期の短縮も可能。
 加工用機械については、集成材にドリルで下孔をあけ、ネジ溝を切る横型専用機械と工具も同時に開発したことで、加工精度を高め、作業時間を削減した。
 SPC工法が実現したことについて、「木質構造関係者に久しく待望されていた、本格的木質構造用剛接合部が出現した。接合剛性、接合効率とも、これまでの接合部に比べ飛躍的に性能が高い接合部である。ドリフピン、ボルト等を使用した従来の接合部は、初期滑りの問題、2方向ラーメンを実現する困難さ等、大げさに言えば真の意味での木質ラーメン構造は実現不可能であった」と建築界で驚きの声が上がった。
 
        <隠岐島フェリーターミナル全景とその内部>